100年の歴史をもつ、福島県伊達市梁川町五十沢地区のあんぽ柿。
硫黄で燻してから干し上げる事で、雑菌の発生やカビが予防され、独特の飴色がかった美しい橙色ととろっと熟した甘味が醸成されます。
昔ながらの“スイーツ”は、トロッと甘く、やわらかい食感が一層、濃厚さを引き立てます。
ビタミンA、βカロテン、カリウム、食物繊維など栄養面でも優秀な逸品。
また、あんぽ柿へと乾燥させている「柿のカーテン」は初冬の風物詩として親しまれてきました。
そんな伝統のあんぽ柿を、次の100年へつなぐべく、JAふくしま未来が平成28年に開設した「あんぽ工房みらい」についてご紹介します。
「あんぽ工房みらい」とは?
「あんぽ工房みらい」はJAふくしま未来が管理する施設で、原料柿の選別機はもちろん、全自動皮むき機、燻蒸設備、自然乾燥循環装置、包装機を取りそろえ、あんぽ柿の加工選別から出荷までを一手に担う最新施設です。
平成28年11月17日より稼働が開始しています。
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※2023年11月~2024年1月のデータ「あんぽ工房みらい」が開設された背景
あんぽ工房みらいが開設された背景は、産地の生産基盤に対する危機感があります。
生産者の高齢化や担い手不足、生産性・生産量の低下といったさまざまな課題を抱えていた産地。
このような課題に対応し、生産者の作業負担の軽減を測り、生産基盤を拡充させるため、”動く干し場”のあんぽ工房みらいが必要とされたのです。
「あんぽ工房みらい」の特徴は?
あんぽ工房みらいの特徴としては、(1)HACCP認証取得し、グローバルな水準で安全で衛生的な食品を製造できることが証明されていること (2)近代的な設備を整えた生産をおこなっていることの2点が挙げられます。
国際的なHACCP認証を取得
HACCPとは、Hazard(危害)・Analysis(分析)+ Critical(重要)・Control(管理・制御)・Point(点)の頭文字をとってHACCP(ハサップ) と読み、食品の安全を確保するための生産管理手法のこと。製造工程のリスクを管理し、体制面での衛生対策となります。
厚労省によると「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法」で、「国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表され,各国にその採用を推奨している国際的に認められたもの」と定義されています。
国際的な規格であるHACCP認証は、輸出時に必要となることも少なくなく、2020年6月からHACCP義務化が始まりましたが、「あんぽ工房みらい」はより安全安心な商品をお客様に届けたいという理念に従い、平成28年(2016年)時点でHACCP認証を取得した設備で稼働を始めています。
近代的な設備を完備
また、あんぽ柿の生産の持続可能性が危ぶまれたことから、近代的な設備を導入し、広範な機械化を実現しました。
皮剥き作業
運び込まれた柿は、まず皮むき作業。最新の設備によって1日約5tの柿の皮を剥くことが可能です。
連吊り作業〜燻蒸
皮を剥いた柿は、つるして乾燥させるための縄を取り付ける「連作り」という作業に移ります。
その後、カビ防止のための硫黄で燻し(硫黄燻蒸)ます。
減圧式乾燥庫
自然乾燥と大きく異なるのが、「減圧式乾燥庫」での乾燥を挟むこと。
こちらのプロセスを経ることで、従来の自然乾燥では1ヶ月ほどかかっていた乾燥が、2週間で出荷できるようになりました。
自然乾燥
これまでの準備工程を経た柿を、自然乾燥をすすめます。甘さが濃縮されていき、あんぽ柿ならではの甘く濃厚な食味、かつトロトロな食感へと仕上がっていきます。
柿が連なる様子は橙色の「あんぽカーテン」と呼ばれます。
その後、梱包作業や品質チェックを経て、お客様のもとへと旅立っていきます。
センター長に訊く、あんぽ工房みらい
あんぽ工房みらいのセンター長、菊池洋介さんに施設について伺いました。
「あんぽ未来工房は生産者の高齢化など、生産基盤が危ういという危機感から、産地の生産基盤を拡充、支えるためにできたJAの施設です。
おかげさまで今年で稼働から7年目となりますが、品質のいいあんぽ柿の生産をおこなえています。
2022年で、あんぽ柿の組織的な出荷が始まって100周年となるのですが、産地を支える存在として、次の100年もあんぽ柿の産業を残していけるよう、努力していきたいと思います。」
まとめ|あんぽ柿は安全・安心な名産品だった!
あんぽ工房みらいについてご紹介しました。
100年の伝統と、近代的な設備とが融合したあんぽ柿は、安全・安心な和のスイーツだということがわかりました。
ぜひ、みなさんも伊達のあんぽ柿を召し上がってくださいね!